ウィローパターン(柳模様)の物語

日本の茶道と同じように、イギリスの文化においても、お茶を楽しむ器はとても大事にされています。

今日は、ティータイムの第二の主役と言ってもいい、器のお話をしたいと思います!

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骨董屋で一目ぼれして買ったお皿。まさか、イギリスと縁が深い図柄だったとは・・・。

 

 

シノワズリー(東洋趣味)とブルー&ホワイト

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16~17世紀の大航海時代、中国や日本の陶磁器は貿易における主要な取引商品の一つとなっていました。もともと多彩色の陶器がメインだった西洋において、白地に藍で絵付けを施す染付は珍しく、17世紀頃から染付を真似た陶器がつくられるようになりました。

染付は、たしかにほどよい華があって、料理やドリンクもおいしそうにみえますよね。

18世紀中ごろには、イギリスで銅版転写陶器(プリントウェア)という新しい技術により、安価に絵付けされた陶器が本格的に商品化され、ブルー&ホワイトの陶器が一般家庭に普及していきます。

 

そのプリントウェアの中で、イギリス製のものとして最も多く日本に伝わったのが、次にご紹介する「ウィローパターン」です。

 

ウィローパターン

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ウィローパターンは、19世紀初頭イギリスで、ミントンの創始者トマス・ミントンにより東洋由来の陶器を模して発案されました。その後、この図柄は多くの窯が真似をして生産し、ブルー&ホワイトの陶器に多く取り入れられました。

 

ウィローパターンとは柳模様の意味で、これはお皿中央でたなびく柳からきています。もともとは、中国の悲恋の物語を題材に描かれたもので、絵柄は物語に沿ったものになっています。

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(写真はIona and Peter Opie(1997)The PUFFIN BOOK of NURSERY RHYMES,PUFFINより引用)

 

空高く飛ぶ二羽の鳩

中国の小船が帆を進め

しだれ柳がたなびいている

橋の上に4人ではなく、3人

中華の邸宅が大地を支配するように佇み

リンゴの木が実を結ぶ

うつくしい垣根でわたしの歌はおわり

 

上記はナーサリーライムとして伝わる詩ですが、これはウィローパターンを見てそのまま詠んだものですね。

発案者であるミントンの手を離れて、ウィローパターンがいかに人々に愛されていったかがわかります。

 

 

私がこのお皿を買ったときも、他の多くの骨董食器に紛れてウィローパターンは目を引きました。日常使いもしやすいので、本当に優れた図柄だと思います。

スポードやフォートナム&メイソン、ウェッジウッドなどの有名な窯でもウィローパターンは焼かれていて、コレクターの方もいるようです。たしかにいろんな窯のウィローパターンを集めて、比べるのも楽しそうですね。

それになにより、自分の食器に特別な物語が秘められているというのが素敵だと思いませんか?

 

それでは最後に、ウィローパターンの物語を載せて終わりたいと思います。

 

中国の柳模様の物語

昔々、高級官吏の娘にコンセーという名の美しい女性がいました。

彼女の家は大変なお金持ちで、その豪邸には秘書として働くチャンという男がおり、コンセーとチャンは次第に惹かれあうようになります。

 

しかし、それを知ったコンセーの父は激怒し、チャンを屋敷から追い出して、二人が会えないように垣根を張り巡らし、コンセーを身分の高い青年将校タージンと無理やり婚約させてしまうのです。

フィアンセとなった青年将校タージンは美しい娘との結婚を大いに喜び、さっそく財宝を手にコンセーの屋敷へ訪れ、結婚の準備が始まります。

 

さて一方でチャンもコンセーのことを諦めていませんでした。結婚式の前夜、チャンは屋敷へ忍び込み愛するコンセーをなんとか連れ出します。

しかしチャンとコンセーは、逃亡の途中で父親に見つかってしまい・・・

再び激怒した父は、橋を渡って逃げようとする二人を追いかけますが、チャンとコンセーは必死の思いで小舟を使って屋敷を離れ、遠い小島へ駆け落ちします。

 

二人はたどり着いた小島で暮らし、幸せな日々を送りました。

でも、お話は幸せなままで終わりません。恥をかかされた青年将校タージンによって、チャンは殺され、それを知ったコンセーも自ら命を絶ってしまいます。

かわいそうな二人の魂は、永遠の愛を示す鳩へと姿を変え、今でもウィローパターンの空を飛んでいるのです。

 

 

このお話は、遠い昔の中国の物語という設定になっていますが、実は中国にそのような話はないそうです。ウィローパターンの発案者であるトマス・ミントンが、自社商品の販売促進のため創作したということです。

それだけ聞くとがっかりされるかもしれませんが、当時の東洋趣味のイメージがこの物語に色濃く現れているようで、色々なことに思いをはせて眺めることができる、素敵な絵柄だなと私は思います。

トーリーをアニメーションにした動画です↓ 

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